昔々、私がまだ小さい坊やだったころのお話。
当時まだおそらく3歳か4歳。それでも記憶がある。
母に連れられ、連日何でかわからんけど、電車に乗って出かけた。
帰りは夕方なんで、やっぱり17時くらいだったか?
京浜急行の各駅停車に乗り、横浜駅から井土ヶ谷駅に向かう。ここだけはなぜかよく覚えている。
夏などは屋根が大きい電車が来ると「お母さん、やったよ!冷房車だよ!」と大喜び。
しかし、屋根の薄い車両が来ると「ああ、扇風機のやつだ・・・」と意気消沈。
そう、当時は冷房車なんてなかったのですよ。天井に扇風機が数台付いた車両が来る。
でもって、乗り込むとサラリーマンのおじさんたちが沢山乗っていて、小さい子供はそのへその下くらいで
やっとの思いで母に手を引いてもらって踏ん張っていた。
でも、そのおじさんたち、自分たちだって仕事で疲れ切って余裕なんてないはずなのに、必ず、
「坊や、大丈夫か?もうすぐ次の駅だよ。」などと、親切に声をかけてはげましてくれる。それも一度や二度ではない。
ぎゅうぎゅうに押されるのを守ってくれるおじさんもいた。
時には座っているのをわざわざ立って、席をゆずってくれるおじさんまでいた。
おじさんたちは高度成長期と呼ばれる時代の、お酒やタバコやマージャンやパチンコを楽しんでいた世代であろう。この国のために必死に働いて、それなのに割と早死にしてしまった人たちだ。
この人たちは自分とは見ず知らずの小さい子供にまで気にかけてくれた。勿論、全員が良い人だったかなんて
わかりゃしない。でも、そういうなんだか良い空気がぎゅうぎゅう詰めの電車の中に漂っていた。
すごい、なんという男気だろう!本当に昭和の日本は凄かった。
今よりもイジメもひどかったし、暴力なんて当たり前。年功序列も、男尊女卑もひどかった。ビデオも携帯もパソコンもコンビニもなんにもなかった。
でも、おじさんたちはとても強くて優しかった!これだけは間違いないこと。
今では僕がおじさんになってしまったけど、彼らと同じように出来ているだろうか?
弱い立場の人や老人、女性、子供、彼らに対して優しくできているだろうか?
月並みな言い方だけど、昔よりモノが豊かになっていても、人の気持は全くそうはなっていない。
今の電車の車内は、足を踏んでも謝らない、ヘッドホンをかけて周りなんて知ったこっちゃない、リュックサックで押しまくる、携帯でしゃべりまくる、○○さん、こっちこっち!とか言いながら、空いた席を我が物顔で自分たちのグループだけで独占する婆さんたち・・・
見ていても本当にウンザリするようなバカばっかりだ・・・
平成もそろそろ終わります。
昭和は本当に遠い、遠い昔になってしまいます。
だからどうしたっていうんだ?
それでもやはり、あの強くて優しい「おじさん」たちを想って、僕も頑張ろうと思います。
ではまた。